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地方編
 「おたがいさま」
(2017年12月号より)

弱さの共通点は誰にでもある

和島 加藤さんは、てんかん患者が集まる場をサポートされていますが、患者同士の交流についてどのような思いをお持ちですか。

 

加藤 患者さんの話っていうのは、自分にすれば、どういう人たちのものでも、すごく意義難くて、ためになっていますね。昔ですね、今もまだ会はあるんですけれども、「めざめの会」(昭和46年に活動を開始した精神障害回復者の会)というのがありまして、精神障害の人たちが集まって活動していたんですね。

作業所を立ち上げる時に、わたしもそこさ入って活動したんです。7人くらいで円座を組んで、みんなでひとつのことを語り合ったりしてね。「生きていく」っつうのはどういうんだとかね、「幸せ」っていうんはどういんだとかね。同じ悩みを持ってる人だから、すごく分かるんだなあと思ってたね。当事者同士が話しするのを、「傷の舐め合いなんだべ」って言う人たちもよくいるんですよ。わたしは、舐めてみないと相手の味も分かんないんでないかなって思うのね。相手と話してコミュニケーションとってみないと、わかんないことってあるんでないかなってね。うんとコミュニケーションとるっつうこと、話を聞く、話すっつことは大事にしてますね。  

 

和島 電話がかかってくることもあると伺いました。  

 

加藤 いろんな障害の人たちから電話がきますが、てんかんと精神(障害)の方は特に多いですね。3時間くらい電話してるんですよ。

 

小森 加藤さんは、いま栗原にお住まいですけれども、電話で相談をされる方は、遠くに住んでいらっしゃる方なんですか。  

 

加藤 大体の人は、仙台とかそこら辺なんですけども、少し遠いと福島とかからもかかってくる時がありますね。

 

小森 同世代くらいの方なんですか。 

 

加藤 同世代くらいの人もいますし、ずっと下の人もいますし。

 

小森 ご相談にお答えする時に、加藤さんが気をつけていることってありますか。  

 

加藤 相手を傷つけないっていうことですね。相手を傷つけては、うまくないんだろうなと思うから。そうなると今度わたしとしゃべってくれなくなるんでないかなと思うんです。いろんな相談があるんですけどね、共通点っていろんな形であるんです。いつも思うのは、弱さの共通っつうのは誰にでもある。健康な人でも風邪ひくことあるし、痛い時とかあるんですよ。話してみると、結構他の障害の人たちも、生き方なんぼか違っていても、生きていかなきゃいけないのはみんな同じなんだろうなって。同じところが共通しているから、本当の弱さのつながりっていうところを大事にしていますね。  

 

和島 いろんな病を持たれた方と作業所を立ち上げたとのことですが、その時のエピソードをお聞かせいただけますか。  

加藤 そこは無認可の作業所で、どの障害を対象にしてるっつうことではなかったのね。知的(障害)の人たちも来てたけど、どっちかっていうと精神の人たちが多かったですね。あの頃は精神分裂病って言われてたから、「俺たち何が分裂なんだか分かんないね」って話してたけど、その名称が変わるっていうことで(02年「統合失調症」に変更された)、何ヶ所かで精神の活動も一緒に立ち上げたんですよ。統合失調症に病名が変わって、当事者はずいぶん活動しやすくなったって言いますね。自立支援法の反対運動とかも精神の人たちの中から生まれていったんですよ。てんかんの人たちは、それさ恩恵をもらってるんです。よく、てんかん患者の自動車事故で、精神の人たちも一緒に括られてしまったりしてね。その時、よく精神の人たちに言われたのは、 「あんたたちのこと俺たちがしてもしょうがないんじゃないんすか」って。てんかんの人たちが自動車事故の問題で活動したっていうのは、この辺では聞いたことなかったんですよ。逆に精神の人たちが、てんかんの事故のことで講演会なんかやったのね。 

 

何を指すかわからない病名が
内と外をつくっている

 

和島 精神分裂病が統合失調症に名称変更されたことで、当事者が活動しやすくなったとのことですが、てんかんも病名を見直した方がいいんじゃないかという考えがあります。  

加藤 昔は、病名変わっても中身が変わらないことには大したことないんじゃないかなって、ずっと思ってたのね。でも、そうでなくて、やっぱりやり方ひとつで、例えば病名を変えることで理解も進んでいって、てんかんの人たちのきちんとした覚えられ方っていうかね、みんなに分かってもらうっつうことができるんだろうなと思ってんですね。

ただ、当事者の人たちが自分だったらこうしたいっつうことを、あんまり語んないんですよね。話せる場もないのね。それと、名称をきちんと変えてもらった方がいいって語ってる当事者が少ないんですよ。たぶん思ってはいると思うのね。それ言葉さ出して、きちんと言えるかっていったら、言わないのね。だから病院の先生にもよく言われるの。「あんたたちどう思ってんの」って。わたしも自分の思っていたことを話したんだけど、病名のことはすぐたち消えになって、前さ進まないんですよ。(癲癇(てんかん)の)癲っつう字がやっぱりおかしいって思うから(「癲」には「きちがい」という意味が含まれている)、もう少しみんなが分かってくれたらいいなあと思うんですけれども。

 

和島 小森さんはこの病名についてどのような印象を持たれますか。 

小森 私自身がてんかんについてあまりよく知らなかったので、てんかんを持っていらっしゃる方が偏見を持たれるとか、漢字にも差別的な意味があるということも知らなかったです。なので、てんかんという病名に対しては、最初はあまり違和感を持っていなかったんです。ただ、前回のぽつラジオで、「てんかんって発作のことですか?」っていう質問があったと思うんですけど、確かに病名なのか、何を指しているのかなって、そのとき疑問に思って。何を指してるかわからない言葉が内と外みたいなものをつくってしまっているというか、壁みたいなものができているんだなと思って。それって、きっとてんかんだけじゃなくて、他にもあると思うんですけれど。てんかんって言葉は、広く認知はされているのに、深く知らないところで止まっていて。症状とか悩みとかがわかりづらいってこともあると思うんですけど、それ以上知ろうとしなかったっていうのは、もしかしたらその病名にも関係があるのかなという風に思いました。  

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