てんかんを聴く ぽつラジオ
地方編
「おたがいさま」
(2017年12月号より)
何やってもお互いさま
和島 リスナーからのメールを読み上げさせていただきます。ラジオネーム・つーさん、30代の女性です。
「知り合いの息子さんが最近てんかんを発症しました。彼は離島に住んでいて、一番近いコンビニでも数キロ離れています。週末は所属するサークルの練習に出るために島を出なくてはならず、どうしたものかと頭を悩ませています。しかも、新車を買ったばかり。お聞きしたいのは、運転免許を失うことで生活に支障を来したことがありますか。また、その場合はどのように工夫されましたか」
とのことです。
加藤 この辺もなんですけど、バスがすごく少ないんですよ。何か急用があって、どこかさ行かなきゃいけないっていう時が大変なんですね。タクシーも2台か3台くらいしかないから、出払ってしまうと、歩くしかないんですよね。あとはね、乗り合いバスってのがあるんですよ。あれだと1台の車に乗り合って行くんですけれども、300円くらいなので他の町や病院さ行くのにいい。行政で始めたものがそのまま残ってるんですよ。もっと広まったらいいなと思ってますね。
和島 小森さんは乗り合いバスをご存知でしたか。
小森 私が岩手県の陸前高田というところに住んでいた時には、乗り合いタクシーというのがあって。被災した地域で、みなさん仮設住宅も違う地域にバラバラになってしまったし、スーパーとか買い物だけでも通うのが難しくなっていたので、そういうのが使われるようになっていました。
ちょっと違う質問になっちゃうかもしれないですけど、加藤さんは通院先が車で1時間くらいですけど、栗原から引っ越そうと思ったことはなかったですか?
加藤 それはありましたね、随分ありました。仙台さ行って、住めたらいいなって。今でもそれは思ってるんですけども。なんていうのかな、なかなか大家さん貸してくれないんですよ。ちゃんと保証人を立てても、なかなか貸してくれない。自分で自由に住む場所を決めて生きていくのが本当なんだろうなって思ってるけど、自由に住めないんですね。それは昔から問題になっていて。借り上げのところだったら一番いいなって思ってんのね。
小森 そうだったんですね。お家が借りられないというのは想像もしたことなかったです。
加藤 最後は、「家借りるには生活保護もらった方が早い」って言われるんですよ。生活保護だときちんと探してくれるし、国から金が入るから大家さんもいいよって言うんですね。ところが、一般の障害を持った人たちで借りたいと思うとさ、まずだめだね。
小森 逆に、栗原で作業所も立ち上げられて、この地域に住み続けていくという思い入れはありましたか。
加藤 それはあるんですけどもね。昔だと作業所立ち上げれば、行政と関わりながら、自分たちがこうやりたいっていうことをある程度できたのね。でも、今は自立支援法というのができて、法人格持たないとそれはできないんですよ。補助金ないとなかなかできないからね。で、補助金もらって運営していこうと思うと、全部法人格ないとだめなのね。協力して積み上げてきたことが、自立支援法で一発でだめになってしまったんですよ。あれを元さ戻すのはちょっと大変だろうなって思っているのね。
小森 2011年に宮城県にも大きな地震がありましたけれども、加藤さんもご自宅が被害に遭われたと伺いました。何か災害時に困難だったことや、災害をきっかけによくなったこととか、もしあればお聞きしたいなと思っていました。
加藤 災害の時は、わたしの家も随分痛まってしまって、何ともしようがなかったんですね。いま収録しているこの部屋だけが、自分の住めるところというか、居れるところだったんですね。台所と茶の間と2つしか使えなかったんですよ。寝室は使えなくなって、ここで寝て起きてだから、気持ち的には大変なのね。今も箪笥が倒れてそのままになっているところには行かないんですよ。部屋はそのままになっていると思うんです。とにかく自分の気持ちだけは元気に持たないといけないなと思って、友達のところに行って、友達が畑をやっていたもんだから、野菜つくりを一緒にやったね。お互いに一人暮らしだったから、何かあれば行ったり来たりして、いろいろ工夫し合ってたんですよ。繋がってね。わたしは野菜つくり手伝って、友達は出来た野菜をよく家さ持ってきてくれました。
小森 お互いにおひとりで暮らされていらっしゃる中で、助け合いながら、支え合いながら生活するというのは、加藤さんがずっと続けてこられている活動とも繋がっているなあと思いました。
加藤 まあ、何やってもお互いさまなんだべなって思ってね。お互いさまなんだよなって。どっちが手伝ったから良いんでなくてね、手伝わせてもらってるっていうのもあるしね。一緒にこうやっぺ、ああやっぺって話しながらやってましたね。
文字起こし:小森はるか
構成:和島香太郎
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