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SUDEP啓発編
 「生きてください」
(2019年12月号より)

患者の気持ち

 

和島 リスナーからのメールを紹介します。

『20代の女性てんかん患者です。SUDEPを知ってからの状況についてお聴かせいただけるでしょうか。私は診断から10年目にしてSUDEPを知りました。身内には何も話していません。今の自分の病状では実感を持ちきれないことや、家族の気持ちを推し測ってみたことから伝えないことを選択しています。しかし、 「治すことはできなくても、娘の体の状態やリスクはきちんと知っておきたい」と親は言ってくれています。それならば、果たしてこのままでいいのだろうか…と悩みます。自分なりの切り口を見つけるためにも参考にさせていただけると幸いです』
以上ですが、ユキさんはSUDEPをどのように捉えていますか?

 

ユキ 驚きは特になくて…。私は脳膿瘍の後遺症でてんかんになったんです。突然、脳膿瘍の診断が出て「すぐに手術になります」、「死ぬかもしれません」というのを言われたことがあるので(笑)。死については家族も最初から感じていました。

和島 SUDEPの存在については、お母さんと話しましたか?

 

ユキ 話してないんですよ。そういうのが起きますって聞いたら、ショックはショックだと思うんですけど、その時はその時で受け止める覚悟でいると思いますね。誰でも突然死ぬことはあると心得て生活しているので。
 

和島 なるほど。じゃあ SUDEPについて話そうとは思っていないと。

 

ユキ はい。

 

和島 コンちゃんのお母さんはSUDEPについてご存知ですか?

 

コン 今回のぽつラジオでSUDEPの話をするっていうのは母親に伝えています。このラジオを公開したら母親が聞くと思うので、そのときにちゃんと話ができたらいいなぁと…。ちょっとてんかんとズレますけど、自分は過去に精巣癌で精巣を摘出していて、食道脇にも2センチの腫瘤があって、今は両方とも完治しているけれど、今後どういった病気で現れるか分からないから、一応死っていうものは覚悟しています。SUDEPもこれで勉強になるけど、あまり気にしていると自分もやりづらい部分があるから、普段の生活では変わりなく過ごしたいと思います。もし、自分がSUDEPで亡くなった場合、先生たちが話してくれると、母親も前向きになれるのかなっていうのがあります。

 

和島 ハチさんはいかがですか?

 

ハチ もし、親がSUDEPを知っていたら、自分の一人暮らしを許してくれただろうかということを考えました。だから、知らなくてよかったと思いつつ、本当にそういった事態が起きたとしたら、親は一人暮らしを止めたかっただろうなって…。そんな矛盾したような、複雑な気持ちになりました。

 

渡辺 なるほど。

 

和島 ご家族にはSUDEPのことを話す予定はないんですね。

ハチ ないですね。自分がこれから就く仕事が、結構ハードな職場になる予定なので、もし(SUDEPを)知ったら、おそらく心配でたまらないんじゃないかなと。

 

和島 そうですよね。

 

ハチ いつか、そういう可能性もあったんだよと話すかもしれませんが、それは数年後、もしかしたら10年とか経って、自分自身も何か確信を得たときになるかもしれないです。ただ、家族と話すっていうよりも、同じように悩んでいる人たちと話すことで、それが起きる確率だとか、皆はどういう風に対策を取っているんだろうとか、自分個人の問題として話し合える場があるのはすごく助かるし、次に何かしようというときにあまり怖がる必要はないんだなって感じられるように思いました。

 

和島 そうですね。患者自身がSUDEPのリスクを知ってるということが重要ですよね。僕も親に言えてないんですよ。ただ、仮に自分がSUDEPで亡くなったとき、そのリスクを知らなかったことと、ちゃんと向き合っていたのとでは、親の捉え方が少し違うんじゃないかなという気はしています。だから、患者本人には伝える必要があると考えているんです。

 

渡辺 伝えるためにはご本人が受診されないといけないですよね。学生さんや仕事がお忙しい方は、しばしば家族が代理で受診されることがあって、そういう場合には伝えるチャンスがないです。ご本人が来てくださると、よもやま話をしているうちに話すことはありえると思うんですけど。特にその方がちゃんと治療に向き合ってらっしゃらない時には…。さっき、SUDEPがおきやすいファクターの中で仰っていましたけど、けいれんの発作が止まっていない方とか、お薬を勝手に止められたりする方は、SUDEPがおきる率が高くなるので、そういう患者さんが目の前にいらっしゃれば、「稀ながらもそういうことがおきますので、ちゃんとお薬を飲んで発作を止めるということは、生きていくために根本的に大事なんですよ」とお話しするようにしてます。医師もチャンスをみて話す姿勢が必要ですね。

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