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SUDEP啓発編
「生きてください」
(2019年12月号より)
 
遺族からのメッセージ

 

和島 SUDEPの遺族の方から届いたメッセージを読み上げさせていただきます。


『12月19日で息子・也(13歳)を失ってから丸3年になります。12月になると心がざわつきます。今でもあの子を抱いた温もりと、冷たくなった身体をさすりながら、自分の心も凍っていくようなあの感覚が繰り返し襲って来ます。SUDEP、どうか医師から伝えて下さい。ネットの情報は不確かで、医療関係者であった私でも正確な情報を選り分けるのに苦戦しました。日本語はほとんどなく、英訳も自力で、まだまだ自動翻訳はレベルが低いです。自分で命を守るということ、それを祈る家族がいるということ、きちんと投薬コントロールが出来れば、悲劇を防げる可能性があるということ。伝えて下さい。突然死は健康な人でも起こりえます。ゼロには出来ない、でも限りなく近づけることは出来るかもしれない。その努力はし続けなければならない。医療従事者が存在を隠してはならない。まだうまく伝えられなくて、申し訳ありません。子を失った母親の、祈り、です。生きて下さい』

今のメッセージを聞いて、率直にいかがですか。

渡辺 そうですね…。確かに一般の方も突然死はあるんです。例えば、私の父も80代で突然死したんですね。アルツハイマー病でグループホームにいた時、夜トイレから帰って、自分の部屋まで来たところでそのまま。心臓が止まって心肺停止だったんです。それから、母方の祖父もお風呂で亡くなったんですよ。だけど、二人ともそれなりの年齢ですから、家族としては天寿を全うしたと解釈ができる。だけど、先ほどのお手紙の方のように、お子さんが若くして亡くなられることがある。例えば、10歳で亡くなられたとすると、それ(突然死)がなかったことを考えると、70年分の人生を生きることなく亡くなられるので、ご家族の気持ちは本当に辛いと思うんですね。また、もともと命に関わる病気があるということならば、年々時間をかけて覚悟ができるんだけど、本当に突然亡くなられるわけですから、物凄い衝撃だと思いますね。ですから、やっぱりそういうこと(SUDEP)をみんなに知っててほしい、知らせて欲しいと思われるのは、本当に最もなことだと思いますね。

和島 そうですよね。このお母様とは他にもメールのやり取りをしているのですが、きっと物凄く複雑な感情だと思うんです。当時の主治医や医療機関全体に対する複雑な思いを抱えていらっしゃると思うんです。でも今回は、てんかん患者の命を思い、(SUDEPのリスクを)伝えて欲しいというメッセージに集約してくださいました。そのことを重く受け止めたいと思っています。では、どうやってSUDEPを啓発していくべきかを具体的に考えなくちゃいけないと思うんです。私は医師と遺族とのつながりが重要な気がしているんです。海外ではSUDEPの遺族が協力し合って本を作り、患者がどういった状況で亡くなられたかを詳細に記載しますね。その日本版を作る必要があると思うし、そういった活動をしていくためには、遺族と医師と患者が連携していくべきじゃないかと考えています。

渡辺 そうですね。それは大変だけどできると思います。それ(遺族の情報)は啓発運動のコアの部分になりますよね。簡単には手に入れられない情報ですし、なかなか簡単には納得できない、重い内容ですよね。それを患者さんご自身で得て発信していかれるっていうのは非常に意味があると思います。さっき、(SUDEPのリスクを)話さないでいてくれてよかったと仰った患者さんのお母さんの話をしましたけど、投書の方のように知っておきたかったと仰るお母さんもいらっしゃる。だから、ご遺族の気持ちを聞くのは非常に大事だと思いますね。いろんな障害者政策でも「自分たちの意見を聞かないで法律を決めないで」と言われますよね。それと同じように、SUDEPに関しては、ご本人(亡くなった患者)からは聞けないわけですから、せめてご遺族からお気持ちを聞いて、今後どういう風に活動をしていったらいいかを考えていかれるのは、非常に大きなことだと思いますね。

​構成・文字起こし:和島香太郎

​本編はこちら

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